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日常を豊かにするベーカリー

 「鷹の台」の駅からほど近く、そこだけでひとつの世界を作り上げているような素敵な空間が広がっている。その一角に建つのが客の足が絶えない「しょう’sベーカリー」。

 この店のパンを口に入れると、「美味しいものを食べる幸せ」に包まれる。もっちりして生地の旨みを感じ粉本来の美味しさを感じさせてくれる食パン、カリッサクッとした食感と甘みのある生地が絶品で贅沢な気持ちになれるクロワッサンなど、シンプルなパンから「パン」というものの美味しさに改めて気づかされる。

ベーカリーを囲む空間

 「しょう’sベーカリー」がオープンしたのは2010年。店主の山崎章さんは昔から食に興味があり、「美味しいパンで人を喜ばせたい」と無添加のパンを作る「おかやま工房」や日本にフランスパンを伝えたフィリップ・ビゴの「ビゴの店」で修行。おかやま工房時代にはドイツやフランスにも研修に行ったそう。「いつかは自分の店を開きたい」という章さんの思いを受けお母さんが現在の地に居を構え、いずれパン屋をオープンするスペースを残してギャラリーをオープンした。

 葡萄棚の下を通ってイギリスのアンティークタイルが敷かれた小道を進むと、植物を使った造形作品が彩りを添えている。突然、ヨーロッパの街角に迷い込んだようなその空間は、美大卒のお母さんによって作り上げられた。洒落ていながらも自然の温かみを感じるこの空間は、質のいい素材と確かな技術で作られた逸品が日常に気軽に食べることのできるこの店のパンの優しさと通じる。

12月の様子。手前がベーカリー入口

幸せを生み出すパン作り

 章さんは修行を経て、この場所で自分の納得するパン作りに取り組む。窯の工房で試し焼きをし、章さんが選んだのは石釜。高価でメンテナンスも大変だが、カリッとした食感が決め手だった。同じ釜で食パンやフランスパンなど異なるパンを自分が納得するように焼けるようになるまでに2年ほどかかったという。満を持してオープンした当初、店頭で早朝に食パンを売り始めると行列ができた。今に続く人気店の始まりだった。

 パンはフランスパン・クロワッサン・食パン・あんパン・クリームパンなど定番のものから「くるみクロッカン」や「アーモンドとさつまいものデニッシュ」、紅茶生地の「野いちごのデニッシュ」や「丹波のくろまめデニッシュ」などデニッシュ系のパンも豊富な品揃え。毎日並ぶ定番商品のほか、季節によって登場するメニューなど、トータルで80を超える。「子どもにも食パンを食べてほしい」と、クマをかたどった「くましょく」も手ごろな価格で用意する。こだわりが詰まったそのシンプルなパンをきっかけに、小さいころから「本当においしいパン」に親しむことができるのは幸せなことだと思う。

 素材は国内産を中心にフランス産の塩や海洋深層水など、章さんが納得のいく素材を使う。「新鮮な状態で食べてほしい」と多くは作らないため、昼過ぎにはどんどん品切れに。そうしてこだわって作り出されたパンは美食家たちをもとりこにし、多くの常連が足しげく通う。

 章さんは店の顔として自分が前に出ていくことはしない。ただ「自分の納得のいくパンを焼く」ことを大切に、日々、真摯にパン作りに励んでいる。そしてその章さんのパンは多くの幸せを生み出している。ギャラリースペースの一部のような空間で、章さんの極上のパンに出会える「しょう’sベーカリー」は、まさに日常を豊かにしてくれるお店。

 

「しょう’sベーカリー」小平市たかの台44-11

営業は9時~パンがなくなるまで。水曜・日曜・祝日定休

 

書いた人 堀内まりえ

「遠くに足を運ばなくても地域に魅力があふれている」と感じています。「しょう’sベーカリー」もまさにそれを実感させてくれるお店。「本当に美味しいパン」がここにあります。

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