小平・一橋学園の学園坂商店街にあるコワーキングスペースすだちは、自分らしく働くためのはじめの一歩を踏み出したい女性を応援する場所。テレワークの拠点でもあり、ボディケアやリラクゼーション、ネイルなどで独立開業を目指すセラピストが日替わりで営業するワンデーサロンでもあります。

「みなさんが巣立つまで、責任を持って見守りたい」と語る事務局長の藤木 淳さんは、利用者からの信頼も厚く、頼られる存在。

若い男性が、なぜ子育て中の女性の働き方サポートに魂を込めているのか、ずっと気になっていました。ご両親の離婚を経験し、母子家庭に育った藤木さん。根底には「子どもたちががんばりたいときにがんばれる環境を作ることが大切」「母親の働き方サポートは、子どもたちのチャンスにつながる」という思いがありました。

「才能があり、思いが強く、人間的にも魅力がある一方で、プロジェクトマネジメントが苦手で事業がうまくいかない女性も多い。そんな人たちを、自分のようにロジカルで現実的な男性がサポートすることで、世の中が変わればおもしろいと思っています」

「すだち」が運営するママ発情報サイト「こだち」の編集会議にて。編集部の女性からみると弟世代でありながら、お父さんのように慕われている藤木さん。ときには厳しい現実も冷静に伝えます。

藤木さんは大学卒業後、電子部品メーカーに就職。営業やマーケティングを担当していました。30才を目前に「守りの姿勢ではなく新しいことをやりたい」という思いが沸き上がり、次のことを何も決めずに退職。

サラリーマン時代に携わっていた事業は、豊かな人をより豊かにするものでした。それよりも、本当に困っている人をその状態から少しでも救うことのほうが、価値があり、自分もワクワクすると思うようになります。

営利目的の企業ではなく、社会貢献ができるソーシャルな世界に身を置くことを目標に、さまざまな支援団体のインターンやボランティアなどを経験。パニック障害を患って飛行機に乗れなくなったことをきっかけに、どちらかというと途上国など海外に向いていた目が、自分が住んでいる地域に向くようになります。

「暮らすまちで仕事をつくる」というキーワードに導かれ、当時「すだち」を運営していたNPO法人マイスタイルで働くことに。それが、「すだち」との出会いでした。

自ら起業するよりも、誰かを応援するほうが向いていると自己分析する藤木さん。

現在はフリーランスの立場で「すだち」の施設運営に携わるほか、週2日は東大和市ふれあい広場にオープンした玉川上水まちのデザイン室でも働いています。ここを運営する立川のシーズプレイスが「すだち」に視察に来たことでつながりができ、東大和市では公民館事業ヒガシヤマト未来大学に立ち上げから関わってきたという縁もありました。

どちらの仕事も、起業したい女性をサポートする立場から、社会の課題解決を目指すという点は同じ。

また、「すだち」がある学園坂商店街とも積極的に関わり、地域を盛り上げる活動も行っています。

「歩行者天国があり、人通りも多く、今のままでもいい商店街なのですが、経営者も利用者も高齢者層がメイン。自分たちのような新しい世代の店舗が入ることで、最近は人の流れが少し変わってきたので、今のよさをそのまま受け継ぐだけでなく、新たな担い手も入りやすい街にしていきたいんです」

商店街の若手メンバー有志と組んでkinno tamagoを結成し、今年3月に初イベントを開催しました。早くも10月には、イベント第二弾「第2回学園坂ミニフェスタ」を開催予定。「自分たちだけでは若い人がよろこぶアイデアが思いつかない」と商店会からの期待も大きいといいます。

近隣の「学園坂タウンキッチン」を利用する「やさしいオヤツ+ごはんmiel*」の庄司淑子さん(右)、「自家焙煎珈琲アヒルのうたたね」店長の鈴木仰さん(中央)と。「大好きな商店街で何かしたい!」という思いが「kinno tamago」発足につながりました。

 

kinno tamagoに参加したいという新しいメンバーも増えてきました。みんなで金の卵をふ化させたい」と意気込む藤木さん。

商店会といっしょになって、この商店街のよさを生かし、継続していく。商店街の課題解決にもつながることをプロデュースしていく。これがひとつのモデルケースとなり、ほかの商店街活性化の参考になれば、という考えもあるようです。

「女性の創業支援では、その結果、働いている人が1人増えるだけ。今ある企業や団体が雇用を増やせたら、より多くの人の仕事を生み出せるのではないか」とも藤木さんは考えます。企業はもちろん、行政やNPOなどあらゆる団体にマネジメントは必要だといいます。

「商店街も含め、今ある団体がよさを生かしながら、もう少し成長できるようサポートができれば」と、新たな目標も語ってくださいました。

 

書いた人:高丸昌子

サラリーマンを辞めるとき、藤木さんを後押ししたのは漫画『宇宙兄弟』のセリフだったとか。「人生は短い。だからテンションが上がらないことをやっている暇はない」

私も、勢いいや、自分の気持ちと直感を信じてサラリーマンを辞めたくちなので、転機に抱いた思いや葛藤に共感の嵐でした。自分のテンションが上がること、ワクワクすることをひとつの物差しにして生きていくのって、間違っていない気がしています。