「国立でおすすめのご飯屋さんを教えて!」と言われた時、相手の人の年齢も、性別も、好みも知らずとも、私が挙げたくなってしまうのが、国立市にある本格ベトナム料理店『くにたちサイゴン桜』です。改めてその魅力を考えてみました。
『くにたちサイゴン桜』は国立の大学通り沿いにある、ランチタイムのお店です。店名の「桜」は、国立と日本のシンボルであることと、お店のシェフのお名前がベトナム語で「桜」を意味することからつけられています。お店で桜さんと呼ばれている女性シェフは、笑顔が素敵な方です。出身国のベトナムでは英語教師として働いていましたが、日本企業で働く男性と結婚したことを機に、約20年前日本に移り住みました。
それまで料理の経験はほとんどありませんでしたが、家庭でおいしい料理を作りたいと考えた桜さん。料理が得意な旦那さんから料理の手ほどきを受け始めたといいます。桜さんは自宅に遊びに来る友人にも手料理を振る舞おうと、ベトナム料理の研究をはじめました。香りが独特なニュックマム(魚醤)に味噌を加えたり、昆布からのダシを使用したり。ベトナムと日本、両方の良さを取り入れた料理を試行錯誤して作ったといいます。そんなこだわりの手料理を近所の人に振る舞うと、とても喜ばれたそうです。ベトナム料理のおいしさをより多くの人に広めたいという思いから、7年前、お店のオープンに至りました。
料理は注文が入ってから、お店中央のオープンキッチンで丁寧に作られます。作り置きをせず、できたての料理を提供するためです。実は、お店で長年出し続けているメニューでも、味付けや切り方は毎年のように変えているそうです。桜さんが料理を始めると、だんだんと食欲をそそる香りが店内に広がります。包丁の音や、桜さんのおしゃべりする声を聴きながら待つ時間も、また楽しい。「元気にしてる?」と声をかけてもらえたり、お菓子の小袋をお裾分けしてもらったりすることもあります。あたたかい関係は、桜さんとお客さんの間だけではなく、はじめてのお客さん同士で生まれることもしばしば。
つぎの→ムサシノ朝会議で聞いた話を思い出しました。(紹介ページhttps://tsugi-no.com/20190126asakaigi-report/)不登校中の子に、学校や家とは別の居場所をつくる活動について。不登校であることに対して、責める気持ちをもつ人も多いそうです。皆と同じことができなくてしんどい思いをしたことのある人は、実はたくさんいるはずなのに。そんなときに、見返りを求めずに「良いんだよ」と言ってくれる誰かに出会えることは、大切だと思いました。
桜さんのお店に行くと、同じように安心感を覚えます。顔が見えるところから作ってもらう一皿には、思いやりがつまっている。そんな出会いは意外とみつかりにくいものだと、私は思います。お互いにお金を払う、払われる、で終わる関係が世の中にはたくさんあるけれど、それに慣れてしまうのは淋しいことかもしれません。
この時注文した生春巻きは口に入れるのにちょうどよい大きさで、もちもちした皮とシャキシャキした野菜の歯ごたえが心地よかったです。ゆっくりとご飯を食べる時間は、ぜい沢でした。
是非一度、足を運んでみてください。
『くにたちサイゴン桜』
国立市東1ー16ー17ポポロビル南館2階
電話 : 050-3575-5027 (留守電)
営業時間 : 11:00~15:00
定休日 : 水曜日、第4・第5日曜日
ホームページ : http://www.saigon-sakura.com/index.html
書いた人 芦谷日菜乃
よく行く街でも、自分の知らないわくわくする場所はたくさんある。それに気がつかないなんて、もったいないじゃないか、と思いつつもやもやしていたところ、つぎの→編集部に出会いました。考えたことを伝えられる人になりたい、学生です。取材させていただきありがとうございました!