武藤さんとの出会いは、注連縄(しめなわ)作りのワークショップのことでした。年齢はまだ28歳。講師を務める彼に、若いのになんでこんなことに詳しいのだろうと疑問でした。その後、谷保の農園「くにたちはたけんぼ」の熾し火(おこしび)イベントでお会いした時も、薪を作って、火にくべてを当たり前のようにやっていて、生きていく上で必要なことを一通り押さえている人だなぁ、やっぱりアウトドア好きの好青年てことだよなと思って話しかけてみました。すると、ちょっと想像とは違う姿が見えてきました。

町田市で生まれ、小学生から渋谷区育ち。周囲に田んぼも畑もなく、都市的な環境の中で育ったそう。中学、高校は国立市内の学校だったそうですが、その時に田畑が国立市内にあること自体を知らなかったと言います。

でも5年前、大学4年生になる頃、身内の不登校や自分自身の問題で苦しみ、心身の体調を崩し、学校に行けなくなるという事態に。就職活動を目前にして、立ち止まって大学を休学するという選択をした武藤さん。

そんな武藤さんが前に進むきっかけになったのが、谷保の畑(旧くにたちはたけんぼ)でした。高校時代の友人が谷保で土の家づくりをしていて、その現場に顔をだしたそう。畑で作業している時や共同作業をしている時の心地良さを強く感じたことから、谷保でできた縁をたどり農体験イベントや大工仕事を手伝いながら大学に通うことに。

さらに大学を卒業しても、就職という選択をせずに、家を出て谷保の風呂無しアパートで一人暮らしを始めます。畑を少しずつ教えてもらったり、仕事を回してもらったり、お風呂を貸してもらったりと誰かに頼り、助けてもらうことを重ねていくうちに、自分自身のやれることが広がってきたんだそう。

昨年は、三鷹の鴨志田農園さんから完熟堆肥の作り方を学び、それを現在実践中。生ゴミや落ち葉、鶏糞、牛糞などをブレンドして堆肥を作るのですが、籾殻が良い肥料となるために重要な働きをします。そこで谷保の稲から出る籾殻を使って、新しい堆肥づくりの展開を考えているようです。

今、彼はNPO法人くにたち農園の会の理事として、放課後クラブの運営に携わりながら、畑や田んぼの世話をしています。子供や畑、自然と向き合う立場から、自分自身に誠実でありたいと願う武藤さん。「地に足がついた」という表現がありますが、武藤さんは畑という大地に根ざしながら、まさに地に足がついた取り組みをしています。

 

書いた人 鈴木幹雄

年をとってくると自分のルーツや自分の育った文化への興味が湧いてきます。そんな興味から注連縄づくりにチャレンジしました。そこで出会ったのが武藤さん。若い人に文化が継がれていることを嬉しく思っています。