国分寺にはさまざまなジャンル、スタイルのコーヒー店がある。大学で香川県から上京し、東京の西側に住んだ自分にとって一番近い都会が国分寺。高校生の頃から豆を挽いてコーヒーを淹れていたのだが、僕にコーヒーの奥深さや多様性を教えてくれたのは国分寺だった。
国分寺のコーヒーの話をする前に僕がコーヒーを淹れ始めたきっかけの話を書こうと思う。コーヒーを始めたきっかけは、お世話になった先生が淹れてくれたコーヒーが美味しかったから。東京にくる2年ほど前から美大の受験にむけて作家の先生のアトリエへデッサンを習いに行っていた。もともと絵はまったく描けなかったが、家族には真面目にやる!と言って通い始めた。みんながデッサンに煮詰まってくると先生はいつもお茶にしようと言ってコーヒーや煎茶を淹れてくれた。先生がコーヒーミルでコーヒー豆を挽くとアトリエ中が良い香りに包まれた。いつも淹れてくれるコーヒーはエチオピア モカ。当時はそれに砂糖をたっぷりスプーン2杯入れて飲んでいた。それでも、そのコーヒーは普段飲んでいたコーヒーとは香りも味も違うと思ったし、初めてコーヒーの美味しさに出会った体験だった。
上京してきた当時、香川県にはほぼなかったスターバックスにタリーズ、ドトール(現在は閉店)などの大手コーヒーチェーン店を始め、オーダーメイドの自家焙煎店、古くからある名曲喫茶、渾身の一杯が飲める珈琲店、店主とのコミュニケーションが楽しいコーヒースタンド、有機認証を受けたコーヒーを取り扱う店などなど、個性豊かなコーヒー店が国分寺のまちの中には散らばっていた。
先生の影響でコーヒーを見よう見まねで淹れていたが、コーヒーのことは全然分からなかった。そんな自分がいつの間にかコーヒーの世界にのめり込んでいた。全然知らなかったコーヒーの世界を知るにつれて、分からない事が分かっていないと分かり、だんだんと楽しくなる。コーヒーが楽しくなる。それには様々な理由があるが、僕にとって国分寺で様々なコーヒー店とその店主に出会った事もその大きな要因の一つだと思う。
これから「国分寺のコーヒー事情」では、僕が国分寺のまちで出会ったコーヒー店を紹介していこうと思う。
藤田 一輝 コーヒィネーター
香川県丸亀市出身。国立駅の南口在住。大学進学に合わせて上京し東京の西側に住む。現在はデザイン周辺の企画や、コーヒィネーターとして地域や人と人との繋がりをコーヒーでコーディネートする。その他、出張コーヒー、講座・ワークショップの企画を行う。