Loading...

「発酵の力でみんなを笑顔にしたい!」青木光左代さんに教わる発酵×夏野菜レシピ

先月、いっしょにママチャリで小平野菜の直売所めぐりをさせてもらった「発酵家族」の青木光左代さん(→記事はこちら)。

今回は、夏野菜を使った発酵レシピを教えていただきながら、お話をうかがいました。

「発酵のよさを伝えることで、毎日の食事作りに悩む人たちやその家族を笑顔にしたい」

そんな思いで発酵料理研究家として活動している彼女は、子どもの頃から日本酒の香りが大好きというちょっと珍しいタイプの女の子だったそう。短大の醸造科から農業大学に編入し、醸造・発酵について徹底的に学びました。

「発酵と腐敗は紙一重。人間にとって有益なものが発酵で、害があるものが腐敗なんです。どちらも微生物が増えただけなのに、人の役に立つかどうかでわけられてしまうなんて」と、微生物へ思いを巡らしている様子。発酵への深い愛を感じます。

今回教えていただいたレシピに使った発酵調味料。(写真左から時計まわりに)フルーツビネガー、かつお節、黒酢、そして甘酒。甘酒がピンク色なのは、赤米で作ったものだから。抗酸化作用の高いポリフェノールが含まれ、プチプチした食感も楽しい変わり甘酒。
手作りのフルーツビネガーは、りんご酢、氷砂糖、旬のフルーツ(オレンジ)を100gずつ保存瓶に入れ、4~5日で氷砂糖が溶けたら完成。炭酸水で割るとさっぱりしたドリンクに。暑さでバテた体がシャキッとします!

青木さんは大学を卒業後、食品や薬品メーカーの研究職として働きながら、「いつかは料理の仕事がしたい」と調理師免許を取得した努力家。本格的に食の道に踏み出したのは出産後でした。生まれたばかりのわが子が、母乳だけでどんどん育っていく姿を見て、食事の大切さに改めて気づいたといいます。

その頃、ご主人に子どもを預けてパン教室に通っていました。ところが、同じように家で作ろうとしてもできない。手を粉だらけにして生地をこねているときに赤ちゃんが泣く。お世話をしているうちに発酵時間が過ぎて生地をダメにしてしまう。「小さな子どもを育てながらパンを焼くのは無理」と感じた体験から、保存容器とスプーン1本で生地を作る「こねないパン」を開発します。教えた友人からクチコミで広がり、教室を開くまでになりました。

火を使わず、電子レンジやトースターで作れるレシピは、夏場はもちろん、料理に集中して時間を取れない子育て中の人にもおすすめ。青木さんはパンを焼くときも、ついでに芋や根菜をいっしょに焼くそう。

  もうひとつ、子育てをするなかで生まれたレシピが「保温ポットで作る甘酒」。酒粕で作る甘酒と違い、米麹を使って発酵の力で作る甘酒はノンアルコール。子どもでも安心して飲め、栄養満点で昔から「飲む点滴」ともいわれています。これを米麹、米、水を土鍋に入れて火にかけ、温まったら土鍋ごとバスタオルでくるみ保温する方法で作っていた青木さん。あるとき、そのタオルを子どもが引っ張って中身がこぼれ、大惨事に……。それがレシピ開発のヒントになりました。

残念ながら家族は皆、甘酒が苦手なので、青木家では甘酒を料理の甘みづけとして、毎日のおかず作りに取り入れているそう。それ以来、もともと風邪をひきやすかったご主人が、ほとんど風邪をひかなくなったのだとか。

甘酒の甘さは砂糖とは違い、やさしく奥深い味。みりんのようにアルコールを飛ばす手間がいらないから、生野菜のあえものなど加熱調理しないものにもそのまま使えます。肉料理は、酵素の力でやわらかく仕上がるというメリットもあります。

「人間の腸内細菌は、平均1.5㎏もあるのだそう。その中で善玉菌の割合を増やすには、マメに発酵食品を体の中にチャージすることが重要なんです」と青木さん。毎日甘酒を飲むのは大変でも、調味料として使うなら、無理なく発酵食品を取り入れることができそうです。

意外かもしれませんが、かつお節も本枯節は発酵食品。手軽な削り節パックでもいいので、常備しておくのがおすすめ。何にでもかけるだけで、食感の変化とうまみが加わります。

青木さんの発酵レシピは、おいしさはもちろん、作りやすさも魅力。3児の母として忙しい毎日のなか、段取り力を発揮して数々のレシピを考案してきた彼女は、「発酵こそが手抜きのツール」だといいます。

「例えばお肉は、甘酒とみそを混ぜたものや塩麴に漬けると、本当にやわらかく、おいしくなります。家族に『おいしい!』って褒められると、私もうれしい。子どもに対しても心穏やかに接することができます」

今回教えていただいたレシピは、どれも簡単なものばかり。ビールのつまみにもぴったりです。マリネや焼き浸しは、隙間時間に仕込んで冷やしておくと、夜には味が染みて絶品に! こういうものが冷蔵庫にあると思うと、気持ちにもゆとりができます。

この夏の猛暑疲れをリセットする発酵レシピ、夏野菜がおいしい時期に、ぜひ試してみてください。

【プチトマトのマリネ】

プチトマト200g(熱湯につけてさっと混ぜしてから冷水に取り、皮を湯むき)をフルーツビネガー大さじ2(またはりんご酢とはちみつ各大さじ1)であえ、冷蔵庫で冷やす。

【なすとピーマンの黒酢焼きびたし】

フライパンに油大さじ2を熱し、なす2本(3㎝厚さの輪切り)、ピーマン2個(縦4つに切る)を並べ、ふたをして蒸し焼きに。ときどきゆすりながらじっくり火を通し、焼き目がついたら上下を返して両面を焼く。しょうゆ、黒酢各大さじ1につけ、冷蔵庫で冷やす。

【きゅうりの梅おかかあえ】

きゅうり2本(縦半分に切ってから5㎜幅の斜め切り)に塩小さじ1/2をふり、5分ほど置いてから水けを2~3回しぼる。梅干し1個(たたく、または梅肉ペーストでもOK)、甘酒大さじ1、削り節1パックときゅうりをあえる。

【じゃがいものおかか焼き】

じゃがいも2個(200300g。皮をよく洗い、ひと口大に切る)は電子レンジで5分加熱し、オーブンシートを敷いた天板に並べる。塩小さじ1/4、削り節1パック、オリーブオイル大さじ1、あればガーリックパウダー少々をふり、オーブントースターで8分、上下を返してさらに5分焼く。

 

書いた人:高丸昌子

「発酵料理研究家と取材したのに野菜直売所で買い物して終わり!?」「もっと発酵のことを知りたかった」というご意見・リクエストにお答えし、異例の(?)続編を書かせていただきました。なすの焼き浸しは、フライパンで揚げものをしたあとに作るとなすが油を吸ってくれて無駄がないそう。青木さんのお料理レッスンは豆知識がいっぱいです。調理中の無駄のない動きも勉強になりました。

コメントを残す